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ナーシングホーム業界の動向2026
ナーシングホーム業界の動向|「淘汰の時代」に老人ホーム経営の活路はあるのか
公開日:2026年5月 / 監修:HELPCARE編集部

この記事のポイント
- 2025年の介護事業者倒産は176件で2年連続最多。老人ホーム業界は「需要は伸びるが経営は厳しい」二極化の局面に
- 病床削減と早期退院推進により、医療依存度の高い方の受け皿不足が深刻化。一般的な老人ホームでは応えきれないニーズが拡大
- ナーシングホームは「居住費+介護報酬+医療報酬」の3層収益構造で、1室あたり売上が従来型の2〜3倍になり得る
- 医療保険による訪問看護には介護保険のような区分支給限度額がなく、収益上振れの余地が大きい
- 既存老人ホームのナーシングホーム化(医療強化型への転換)が、生き残り戦略として現実的な選択肢に
有料老人ホームをはじめとする高齢者向け施設は年々増加し、競争が激化しています。介護報酬の引き締めや人件費・物価の上昇も重なり、「需要は伸びているのに経営は厳しい」という構造が鮮明になってきました。
そんな中、医療的ケアを強化した住宅型有料老人ホーム「ナーシングホーム」が、既存の老人ホーム経営者にとって有力な生き残り戦略として注目されています。本記事では、最新の業界動向データを踏まえ、なぜナーシングホームが経営の活路になり得るのか、その理由と具体的な収益構造を解説します。
「需要拡大」と「倒産最多」が同時に起きている老人ホーム業界
老人ホーム業界の現状を象徴するキーワードが「淘汰と拡大の同時進行」です。市場ニーズは確実に拡大している一方で、事業者の倒産は過去最高水準にあります。
東京商工リサーチの調査によると、2025年の介護事業者の倒産件数は176件で、2年連続で過去最多を更新しました。コロナ禍前の2019年(111件)と比べると約6割の増加です。帝国データバンクの集計でも、老人福祉事業者の倒産は2025年に139件と、2024年の140件に次ぐ高水準が続いています。
倒産が高止まりしている主な原因は以下の通りです。
同業との競合激化
有料老人ホームの新設が続き、施設稼働率の低下が深刻化
介護報酬の制約:
介護報酬は公定価格のため、コスト上昇分を価格に転嫁できない
人材不足
介護職・看護職の採用難と離職率の高さが運営を圧迫
物価・人件費の上昇
水道光熱費、食材費、人件費がいずれも上昇傾向
つまり、「地域に高齢者がいるから入居者が来る」という時代は終わり、明確な差別化戦略を持たない事業者は淘汰される局面に入っています。
病床削減と早期退院推進で「行き場のない高齢者」が増えている
業界の苦境とは対照的に、社会的なニーズの面では明確な追い風が吹いています。医療政策の方向性と高齢化の進展により、医療依存度の高い高齢者の受け皿が圧倒的に不足しているのです。
病床数は減少傾向が続く
厚生労働省の資料によると、日本の病床数は1993年の約168万床をピークに、徐々に減少が続いています。地域医療構想に基づく機能分化・連携の推進により、必要病床数は2025年時点で約119万床に絞り込まれる見込みです。
早期退院政策の進展
急性期病院での平均在院日数も短縮が進んでおり、診療報酬上も早期退院を促す加算体系が整備されています。回復期・慢性期病棟も役割が再編されつつあり、「治療が一段落したら病院から出る」流れが定着しています。
受け皿不足の構造
退院した方の多くは、本来であれば自宅、介護施設、療養病床のいずれかに移ります。しかし以下のような構造的問題により、行き場を失うケースが増えています。
| 選択肢 | 現状の課題 |
|---|---|
| 自宅 | 老老介護、介護離職、単身世帯の増加で在宅介護が困難 |
| 一般的な介護施設 | 胃ろう・喀痰吸引などの医療処置が必要な方は受入れ困難 |
| 介護療養病床 | 2024年3月末で完全廃止。介護医療院などへ移行したが定員は限定的 |
| 特別養護老人ホーム | 原則要介護3以上、待機者が多く即時入居は難しい |
このギャップを埋める存在として、医療と介護の両方を提供できるナーシングホームの社会的役割が大きくなっています。
有料老人ホームは増えているが、医療対応できる施設は少ない
厚生労働省「令和6年社会福祉施設等調査」によると、2024年10月時点の有料老人ホーム(サービス付き高齢者向け住宅を除く)は18,460施設で、前年比3.5%(627施設)の増加が続いています。一方で、施設数の増加に医療機能の充実が追いついていないのが実情です。
一般的な住宅型有料老人ホームでは、以下のような医療処置への対応には限界があります。
- 人工呼吸器の管理
- 在宅中心静脈栄養法(IVH)、在宅酸素療法
- ターミナルケア・看取り対応
- 回な喀痰吸引、難病・神経疾患のケア
これらに対応するには、看護師の常駐や訪問看護との緊密な連携など、医療提供体制の構築が必要です。逆に言えば、医療体制を整えることで、競合の多い住宅型有料老人ホーム市場の中で明確に差別化できるポジションを確保できます。
ナーシングホームの収益構造|なぜ収益性が高いのか
ナーシングホームの収益は、大きく3つの柱で構成されます。一般的な有料老人ホームが2つの柱しか持たないのに対し、医療報酬という第3の柱を加えることで、1室あたりの売上単価が大きく変わります。
| 収益の柱 | 内容 | 支払元 |
|---|---|---|
| ① 居住費 | 家賃・管理費・食費・光熱費等 | 入居者(自己負担) |
| ② 介護報酬 | 訪問介護等の介護保険サービス | 介護保険+自己負担 |
| ③ 医療報酬 | 訪問看護等の医療サービス | 医療保険または介護保険+自己負担 |
収益シミュレーション(要介護3の入居者の場合)
業界では、要介護3の方が居住するケースで以下のような収益イメージが目安としてよく示されます。
| 施設タイプ | 1人あたり月収入の目安 |
|---|---|
| 一般的な住宅型有料老人ホーム | 居住費15万円+介護保険利用分(区分支給限度額の範囲内)で合計30〜35万円程度 |
| ナーシングホーム | 上記に加え、医療保険による訪問看護サービスが加算され、入居者の状態によっては60万円以上となるケースもある |
差を生む決定的なポイントは、医療保険による訪問看護には介護保険のような区分支給限度額がないことです。医療依存度に応じて必要な医療サービスを提供できる分だけ、収益も積み上がります。
医療保険適用の条件には注意
訪問看護で医療保険が適用されるのは、厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7、別表第8等に該当する難病・末期がん等)に該当する場合、特別訪問看護指示書が交付されている場合、精神科訪問看護に該当する場合などに限られます。一般的な要介護高齢者の訪問看護は介護保険優先です。「医療保険でいくらでも算定できる」という単純な話ではない点に注意が必要です。

既存施設のナーシングホーム化という選択肢
「ナーシングホーム」自体に法令上の明確な定義はなく、住宅型有料老人ホームをベースに医療体制を強化する形で運営されることが一般的です。そのため、既存の住宅型有料老人ホームを運営する事業者にとっては、大規模な新設投資をせずに業態転換できる現実的な選択肢になります。具体的な参入条件・設備基準・収益モデルの詳細については、「ナーシングホームを開設するには?参入条件・収益モデル・成功のポイントを徹底解説」もあわせてご参照ください。
転換の主なパターン
| パターン | 進め方 | 主なハードル |
|---|---|---|
| 看護師常駐型 | 施設内に看護師を採用し、24時間体制を構築 | 看護師の採用難、人件費の負担 |
| 訪問看護連携型 | 地域の訪問看護ステーション・在宅療養支援診療所と連携 | 連携体制の構築、緊急時対応の整備 |
| 自社訪問看護併設型 | 自社で訪問看護ステーションを新設・併設して提供 | 訪問看護事業の立ち上げ負担 |
自社で訪問看護ステーションを併設するパターンは、医療保険・介護保険の両方からの収益を内部に取り込めるため、収益性の面で最も有利です。一方、立ち上げのハードルがあるため、まずは地域の訪問看護ステーションと連携することから始める事業者も少なくありません。
自社サービスへの誘導は指導指針違反
収益性向上のためでも、入居者に対して自社の医療・介護サービスを強制したり、特定の事業者へ誘導したりすることは「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」に違反します。協力医療機関や自社訪問看護はあくまで「選択肢の一つ」として提示する必要があります。2024年12月の指針改正では、入居者紹介事業者との委託契約に関する留意事項も追加されており、最新の指針内容の確認が欠かせません。

ナーシングホーム化を成功させるための4つの視点
ナーシングホームへの転換は収益面のメリットが大きい一方で、医療依存度の高い入居者を受け入れる以上、現場運営の難易度は上がります。成功させるための視点を整理します。
1. ターゲットの絞り込み
医療依存度の高い方と一口に言っても、末期がん、神経難病、人工呼吸器装着者、頻回喀痰吸引が必要な方など、対象によって求められる体制は大きく変わります。地域の医療ニーズと自施設のリソースを照らし合わせ、ターゲット像を明確に絞り込むことが、効率的な人員配置と差別化につながります。
2. 病院との関係構築
ナーシングホームの入居者の多くは、病院からの退院ルートで紹介されます。地域の病院のソーシャルワーカーや地域連携室との関係づくりは、安定稼働の生命線です。早期退院を進めたい病院側と、医療依存度の高い方を受け入れたい施設側の利害は一致しやすいため、丁寧な情報共有を続けることが重要です。
3. 看護・介護人材の確保と定着
医療依存度の高い現場では、職員の負担は通常の老人ホームより大きくなりがちです。夜間対応や緊急時の連絡体制、看護師と介護職員の役割分担の明確化、教育研修体制の整備など、職員が働き続けられる環境づくりが、結果としてケアの質と稼働率の安定につながります。
4. ICT・見守り機器の活用
2026年6月の介護報酬臨時改定では、処遇改善加算の上位区分算定要件にICT活用・生産性向上が位置づけられました。記録業務の電子化、ナースコールの更新、見守りセンサーの導入などは、業務効率化と加算取得の両面で効果があります。医療依存度の高い入居者を支える現場ほど、機器による業務支援の効果は大きくなります。
“住み慣れた地域で自分らしく暮らす”ためのナーシングホーム
日本では、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、医療・介護・予防・住まい・生活支援を包括的に確保する「地域包括ケアシステム」の構築が進められてきました。高齢者ができる限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けられるようにすることが目的です。
しかし、病床削減、老老介護、介護離職といった構造的課題により、医療と介護の両方を必要とする方の「居場所」は依然として不足しています。一般的な老人ホームが供給過多となる中で、ナーシングホームへの社会的需要はむしろ高まり続けています。
既存施設の経営に行き詰まりを感じている事業者にとって、ナーシングホームへの業態転換は、社会的意義と収益性を両立できる現実的な選択肢です。「淘汰の時代」を生き残るための具体的な戦略として、検討する価値は十分にあります。ナーシングホームが地域包括ケアシステムの中で果たす役割の詳細は、「地域包括ケアシステムにおけるナーシングホームの役割|5つの構成要素から読み解く」もご参照ください。
ナーシングホーム業界の動向に関するよくある質問
介護事業者の倒産が増えているのはなぜですか?
なぜナーシングホームの収益性は一般の老人ホームより高いのですか?
既存の老人ホームをナーシングホーム化するには何が必要ですか?
2026年の介護報酬改定はナーシングホーム経営にどう影響しますか?
M&Aで既存施設を取得してナーシングホーム化することは可能ですか?
ナーシングホーム化と並行して進めたい—ナースコールの見直し
ナーシングホームとして医療依存度の高い入居者を受け入れる場合、ナースコールや見守り機器の選定は、夜間対応の負担とケアの質を大きく左右します。看護師・介護職員の人手不足が深刻化する中、適切な機器の選定で職員の負担を抑えながら、入居者の安全を確保することが重要です。
HELPCAREは、LTE通信を使った工事不要の無線型ナースコールです。スタッフのスマートフォンで呼出受信・見守り・巡視記録が完結し、介護記録システムとの連携構成も組みやすい設計になっています。既存施設のナーシングホーム化を進める事業者にとって、現場の負担を抑えながらICT活用の体制を整えられる選択肢です。
有線・PHS・Wi-Fi・LTEの4タイプの違い、コストの比較基準、施設規模別の選定チェックリストをまとめた「ナースコール選定ガイド」を無料でダウンロードできます。ナーシングホーム化の検討と合わせて、業務効率化の第一歩としてご活用ください。
参考・出典
- 東京商工リサーチ「2025年『介護事業者』倒産」
- 帝国データバンク「『老人福祉事業者』の倒産動向(2025年)」
- 厚生労働省「令和6年社会福祉施設等調査の概況」
- 厚生労働省「医療提供体制の現状~病院数の推移~」
- 厚生労働省「地域医療構想について」
- 厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」(令和6年12月6日改正)
※本記事は2026年5月時点の情報に基づきます。制度内容は改正される可能性があるため、最新の情報は厚生労働省や所管自治体の公式情報をご確認ください。

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