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2026年版
ナーシングホームの開設ガイド
ナーシングホームを開設するには?参入条件・収益モデル・成功のポイントを徹底解説
公開日:2026年5月 / 監修:HELPCARE編集部

この記事のポイント
- ナーシングホームには法令上の定義がなく、住宅型有料老人ホームをベースに開設するのが一般的
- 2024年に有料老人ホーム設置運営標準指導指針が複数回改正され、入居者紹介事業者との契約に関する規定が追加された
- 参入パターンは「施設の有無」×「訪問看護の有無」で4つに分かれ、既存事業がある場合は比較的容易に転換可能
- 収益は「居住費+介護報酬+医療報酬」の3層構造。一般的な有料老人ホームより収益性が高い
- 最大の課題は24時間365日の医療提供体制の構築。看護師常駐か訪問看護連携の2パターンで設計する
医療依存度の高い高齢者の受け皿として、ナーシングホームへの注目が高まっています。病床削減と在宅医療推進の流れの中で、「自宅では難しいが、一般的な介護施設では受け入れてもらえない」という方が増えており、医療と介護の両方を提供できるナーシングホームの社会的需要は今後さらに拡大していく見通しです。
事業者にとっても、居住費に加えて介護報酬・医療報酬を得られる収益構造は魅力的で、住宅型有料老人ホームや訪問看護ステーションを運営する事業者を中心に、ナーシングホームへの参入・転換が進んでいます。
本記事では、これからナーシングホームの開設を検討している事業者向けに、参入条件・設備基準・収益モデル・開設までのステップ・成功のポイントを2026年最新の制度動向を踏まえて解説します。
ナーシングホームとは何か
ナーシングホームとは、もともと欧米での呼称で、日本における法令上の明確な定義はありません。一般的には、看護師の常駐や訪問看護との連携によって医療体制を強化し、医療依存度の高い高齢者を受け入れられるようにした有料老人ホーム(主に住宅型有料老人ホーム)を指します。
受け入れの対象となるのは、以下のような方々です。
- 胃ろう・経管栄養、痰の吸引、在宅酸素療法など継続的な医療処置が必要な方
- 末期がんや神経難病(ALS、パーキンソン病など)で看取りを含むケアが必要な方
- 退院後に自宅での生活が難しく、一般的な介護施設では受け入れが難しい方
従来型の老人ホームと比べた最大の違いは、医療提供体制の手厚さです。一般的な老人ホームでは対応が難しい医療処置や看取りまでカバーできる点が、ナーシングホームの存在意義といえます。
ナーシングホームを開設するには
前述の通り、ナーシングホーム自体には法令上の定義や独自の施設基準が存在しません。そのため、開設するには有料老人ホーム(特に住宅型有料老人ホーム)としての基準を満たし、都道府県知事への届出を行うことになります。
住宅型有料老人ホームが選ばれる理由は、介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)のように都道府県の総量規制を受けず、介護職員・看護職員に関する具体的な数値基準(いわゆる「3:1」)もないため、開設のハードルが比較的低いことにあります。
設備基準の概要
住宅型有料老人ホームをベースにナーシングホームを開設する際の主な設備基準は以下の通りです。
| 項目 | 基準の内容 |
|---|---|
| 居室 | 原則個室、入居者一人あたり床面積13㎡以上 |
| 医務室 | 設置する場合は医療法施行規則第16条に規定する診療所の構造設備に適合すること |
| 浴室 | 身体の不自由な方が安全に使用できる構造であること |
| トイレ | 居室内または各階の居室近接位置に設置。緊急通報装置等を備えること |
| 廊下 | 車いす等で安全かつ円滑に移動できる幅を確保すること |
| その他 | 食堂、機能訓練室、洗面所などを適切に配置すること |
運営基準の概要
運営面では、厚生労働省の「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」に基づき、以下の体制を整える必要があります。
- 管理規程の制定(入居定員、利用料、サービス内容、医療を要する場合の対応など)
- 入居者名簿の整備、老人福祉法に基づく帳簿の作成
- 業務継続計画(BCP)の作成・随時見直し
- 非常災害時を想定した計画の作成と訓練の実施、地域住民との連携
- 感染症の発生・まん延防止のための委員会開催(概ね6か月に1回)、職員研修の定期実施
- 事故・急病に対応する具体的計画の策定と緊急時対応訓練
- 協力医療機関・歯科医療機関との協力体制の構築、嘱託医の確保
- 近隣の介護サービス事業所に関する情報提供
- 運営懇談会の設置(困難な場合は地域交流・家族との連絡体制で代替)
- 「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」の遵守
2024年の指導指針改正に注意
「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」は2024年に複数回改正されました。特に2024年12月の改正では、入居希望者を紹介する事業者(紹介業者)との委託契約に関する留意事項が追加されています。具体的には、入居希望者の介護度や医療必要度に応じて手数料を変動させるなど、社会保障費の不適切な費消を助長すると誤解されるような手数料設定を行わないこと、などが盛り込まれました。これからナーシングホームを開設する事業者は、最新の指針内容を必ず確認しておきましょう。

なお、住宅型有料老人ホームでは、管理者・生活相談員・栄養士・調理員などについて標準指導指針に基づく人員基準が定められています。一方で、介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)のような介護職員・看護職員に関する具体的な数値基準(入居者3人に対し職員1人以上、いわゆる「3:1」など)はありません。そのため、ナーシングホームとして医療依存度の高い方を受け入れる場合は、施設の運営方針や入居者像に応じて、自主的に看護・介護の人員体制を設計する必要があります。
ナーシングホーム参入の4つのパターン
ナーシングホームへの参入は、既存事業の有無によって4つのパターンに分かれます。自社の状況に応じて、最適なルートを選択することが重要です。
| パターン | 既存事業 | 主な進め方 | 参入 難易度 |
|---|---|---|---|
| ①新規参入型 | 施設なし/訪問看護なし | 物件取得・建築、人材採用、訪問看護との連携体制構築をゼロから行う | 高 |
| ②訪問看護活用型 | 施設なし/訪問看護あり | 住宅型有料老人ホームを新設し、自社の訪問看護を活用 | 中 |
| ③施設転換型 | 施設あり/訪問看護なし | 既存の住宅型有料老人ホーム等を医療強化型に転換、外部の訪問看護と連携 | 中 |
| ④統合運営型 | 施設あり/訪問看護あり | 既存施設をナーシングホーム化し、自社訪問看護でサービスを提供 | 低 |
最もハードルが低いのは④の統合運営型で、既存リソースを活かしながら業態転換できます。一方、①の新規参入型では、土地・建物の取得や建築費用、人材採用、入居者募集のための営業活動と、すべてをゼロから立ち上げる必要があるため、相応の資金力と時間が求められます。
既存の住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅をナーシングホームへ転換するケースも増えており、M&Aを活用した事業承継・業態転換も選択肢の一つになっています。
開設までの基本ステップ
ナーシングホームを新規で開設する場合の一般的な流れは以下の通りです。自治体の許認可手続きには相応の期間を要するため、スケジュールには余裕を持って計画することが大切です。
- 事業計画の策定:想定する入居者像、収支計画、競合調査、立地分析を実施
- 物件取得・建築:土地・建物の確保。建築基準法上は児童福祉施設等に分類されるため、設計段階から専門家との連携が必要
- 資金調達:自己資金、金融機関融資、補助金・助成金などを組み合わせて確保
- 医療・介護体制の構築:看護師・介護職員の採用、訪問看護ステーションや協力医療機関との連携契約
- 運営規程・各種マニュアルの整備:管理規程、BCP、感染症対策、緊急時対応など
- 都道府県への届出:老人福祉法第29条第1項に基づく届出
- 入居者募集・営業活動:医療機関のソーシャルワーカー、ケアマネジャー、紹介事業者へのアプローチ
- 開設・運営開始
ナーシングホームの収益モデル
ナーシングホームの収益は、大きく以下の3つの柱で構成されます。
| 収益の柱 | 内容 | 支払元 |
|---|---|---|
| 居住費 | 家賃、管理費、食費、光熱費など | 入居者(自己負担) |
| 介護報酬 | 訪問介護、通所介護等の介護保険サービス | 介護保険+自己負担 |
| 医療報酬 | 訪問看護、訪問診療、医療処置等 | 医療保険または介護保険+自己負担 |
一般的な有料老人ホームの収益が「居住費+介護報酬」の2層構造であるのに対し、ナーシングホームは「居住費+介護報酬+医療報酬」の3層構造になることが特徴です。医療依存度の高い入居者を受け入れることで、1室あたりの売上単価が従来型の有料老人ホームよりも高くなる傾向があります。
特に、訪問看護ステーションを併設または自社運営している場合、入居者への訪問看護サービスを通じて医療保険からの収益も得られるため、収益性は大きく高まります。
自社サービスの囲い込みは違反の対象
収益性が高いからといって、入居者に自社の医療・介護サービスを強制したり、特定のサービスへ誘導したりすることは、有料老人ホーム設置運営標準指導指針に違反します。指針では「入居者が医療機関を自由に選択することを妨げないこと」「特定の事業者からのサービス提供に限定または誘導しないこと」と明記されています。協力医療機関や自社の訪問看護はあくまで「選択肢の一つ」として提示することが求められます。

開設時の最大の課題は「24時間医療提供体制」
ナーシングホームの開設において、最も重要かつ難しいのが医療提供体制の構築です。医療依存度の高い方を受け入れる以上、24時間365日いつでも対応できる看護ケアの仕組みが必要になります。体制の組み方には主に2つのパターンがあります。
| パターン | 体制 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 看護師 常駐型 | 施設内に看護師を24時間配置 | 即時対応が可能、医療処置の幅が広い | 人件費が高い、看護師の採用難易度が高い |
| 訪問看護 連携型 | 在宅療養支援診療所・病院または訪問看護ステーションと連携 | 初期コストを抑えられる、既存リソースを活用できる | 緊急時の対応速度が常駐型に劣る場合がある |
自社で訪問看護ステーションを運営している事業者であれば、訪問看護連携型を選ぶことで、初期投資を抑えつつ収益面でも有利な体制を構築できます。一方、看護師の採用に課題がある場合は、地域の訪問看護ステーションや在宅療養支援診療所との連携を強化する方が現実的です。
また、医療依存度が高い方ほど日常生活でも介護のニーズが高まります。介護職員の十分な確保と、訪問介護事業者との連携体制も不可欠です。
ナーシングホームを取り巻く市場動向
ナーシングホームを取り巻く市場環境は、需要・供給の両面で大きく動いています。
有料老人ホームは年々増加
厚生労働省「令和6年社会福祉施設等調査」によると、2024年10月時点の有料老人ホーム(サービス付き高齢者向け住宅以外)は18,460施設で、前年比3.5%(627施設)増加しています。施設数自体は増え続けており、競争は激化しています。
医療依存度の高い方の受け皿不足
その一方で、医療業界では病床削減が進み、医療依存度の高い患者の受け入れ先は逼迫しています。退院後に自宅での生活が困難な方、一般的な介護施設では受け入れを断られてしまう方の「行き場」が失われつつあり、医療と介護の両方を提供できるナーシングホームの社会的役割は大きくなっています。介護事業者の倒産が過去最多水準にある中、なぜナーシングホームが経営戦略として注目されるのかについては、「ナーシングホーム業界の動向|『淘汰の時代』に老人ホーム経営の活路はあるのか」でも詳しく解説しています。
訪問看護需要の急増
厚生労働省の推計では、2025年に必要な訪問看護師数は11.7万〜12.6万人と、2016年の約2.5倍に達する見込みです。在宅医療シフトが進む中、訪問看護を軸としたナーシングホーム運営は、市場ニーズと制度の方向性に合致したビジネスモデルといえます。
ナーシングホーム開設で成功するためのポイント
Point1入居者像を明確にする
「医療依存度が高い方」と一口に言っても、対象を末期がんに絞るのか、神経難病なのか、医療処置の継続が必要な方なのかによって、求められる医療体制も人員配置も変わります。ターゲットを絞り込むことで、差別化と医療体制の最適化が両立できます。
Point2地域の医療機関との関係構築を早期に
入居者の多くは病院からの退院ルートでやってきます。病院のソーシャルワーカーや地域連携室との関係構築、地域包括ケアシステムへの参画は、安定稼働の生命線です。開設前から営業活動を始めることが推奨されます。
Point3看護・介護人材の定着戦略
医療依存度の高い方を支える現場は、職員の負担も大きくなりがちです。夜間対応や緊急時の連絡体制が整っていないと、看護・介護人材の離職リスクが高まります。働きやすい現場づくりは、結果として入居者へのケアの質を支えることになります。
Point4 ICT・見守り機器の活用
看護師・介護職員の人手不足が深刻化する中、ICT機器や見守りシステムの活用は業務効率化と職員負担軽減の両面で効果が大きくなっています。2026年6月の介護報酬臨時改定では、処遇改善加算の上位算定要件にICT活用・生産性向上が位置づけられており、開設時点から効率化を意識した設計が競争優位につながります。
“住み慣れた地域で自分らしく暮らす”ためのナーシングホーム
日本では、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、医療・介護・予防・住まい・生活支援を包括的に確保する「地域包括ケアシステム」の構築が進められてきました。高齢者ができる限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けられるよう支援する仕組みです。地域包括ケアシステムの中でナーシングホームが果たす役割の詳細は、「地域包括ケアシステムにおけるナーシングホームの役割|5つの構成要素から読み解く」でも解説しています。
しかし、病床数削減や老老介護・介護離職といった構造的な課題により、医療と介護の両方が必要な方の「居場所」は依然として不足しています。ナーシングホームは、この空白を埋める存在として、入居者にとっても事業者にとっても、今後さらに重要性が増していくでしょう。
これからナーシングホームの開設を検討する事業者にとって、求められるのは「箱を作ること」ではなく、「医療・介護・地域連携を含めた運営体制を組み立てること」です。本記事を参考に、自社の強みを活かせる参入パターンから検討を始めてみてください。
ナーシングホームの開設に関するよくある質問
ナーシングホームの開設に必要な初期投資はどれくらいですか?
ナーシングホーム開設に資格や許認可は必要ですか?
開設までにどれくらいの期間がかかりますか?
看護師を24時間常駐させなくても開設できますか?
訪問看護ステーションを併設するメリットはありますか?
業務効率化の第一歩として—ナースコールの見直し
ナーシングホームの運営では、医療依存度の高い入居者への対応として、ナースコールや見守り機器の選定が現場の負担と職員の働きやすさを大きく左右します。特に24時間対応が前提となる施設では、適切な機器の選定で夜間対応や記録業務の負担を大幅に軽減できます。
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参考・出典
- 厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」(令和6年12月6日改正)
- 厚生労働省「令和6年社会福祉施設等調査の概況」
- 厚生労働省「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」資料
- 公益社団法人 全国有料老人ホーム協会「有料老人ホーム設置運営標準指導指針の改正について」
- 老人福祉法
※本記事は2026年5月時点の情報に基づきます。制度内容は改正される可能性があるため、最新の情報は厚生労働省や所管自治体の公式情報をご確認ください。

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