介護業界基礎知識
2026年版
地域包括ケアシステムとナーシングホーム
地域包括ケアシステムにおけるナーシングホームの役割|5つの構成要素から読み解く
公開日:2026年5月 / 監修:HELPCARE編集部

この記事のポイント
- 地域包括ケアシステムは「住まい・医療・介護・予防・生活支援」の5つの構成要素で高齢者を支える仕組み
- 団塊世代が75歳以上となる2025年を目途に構築が進められ、現在は団塊ジュニア世代が高齢化する2040年問題への対応へと視点が移行している
- ナーシングホームは「住まい」と「医療・介護」を一体的に提供する施設として、地域包括ケアシステムの空白を埋める役割を担う
- 多職種連携を前提とするナーシングホームは、システムが目指す「地域全体での支え合い」と親和性が高い
- 事業者にとっては、地域包括ケアシステムへの参画が安定稼働と地域での存在感確立につながる
日本の高齢者人口は2025年に団塊世代の全員が75歳以上に達し、超高齢社会の本格的な局面を迎えました。この大きな社会変動に対応するために国が長年かけて構築してきたのが、「地域包括ケアシステム」です。
そのシステムの中で、医療と介護を一体的に提供できる「ナーシングホーム」が果たす役割は年々大きくなっています。本記事では、地域包括ケアシステムの仕組みを整理しながら、ナーシングホームがどのように機能し、事業者としてどう関わっていくべきかを解説します。
地域包括ケアシステムとは
地域包括ケアシステムとは、要介護状態となった高齢者ができる限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けられるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する仕組みです。厚生労働省が中心となり、団塊世代が全員75歳以上となる2025年を目途に、市町村単位での構築が進められてきました。
従来の医療・介護制度は、サービスごとに縦割りで提供される構造でした。しかし高齢化の進行により、医療・介護・生活支援が複合的に必要となる高齢者が急増し、縦割りでは対応しきれなくなったことが、地域包括ケアシステムが求められる背景にあります。
地域共生社会との違い
地域包括ケアシステムは原則として高齢者を対象とした仕組みです。一方、障害者や子ども、生活困窮者などすべての世代の地域住民を対象とする概念として、近年は「地域共生社会」が掲げられています。両者は対象範囲が異なる別の枠組みである点に注意が必要です。

地域包括ケアシステムを構成する5つの要素
地域包括ケアシステムは、以下の5つの構成要素から成り立っています。それぞれが独立して存在するのではなく、相互に連携することで高齢者の生活を支える仕組みです。
| 構成要素 | 主な内容 |
|---|---|
| 住まい | 自宅、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホーム、ナーシングホームなど生活の基盤となる場所 |
| 医療 | かかりつけ医、訪問診療、急性期病院、回復期病院など医療提供体制 |
| 介護 | 訪問介護、訪問看護、デイサービス、介護老人福祉施設など在宅系・施設系の介護サービス |
| 予防 | 介護予防教室、健康診断、生活機能の維持・向上のための取り組み |
| 生活支援 | 配食、見守り、買い物支援、安否確認など日常生活を支えるサービス |
厚生労働省はこの構造を「植木鉢モデル」で説明しています。土台となる「住まい」という植木鉢に、「介護予防・生活支援」という土が入り、そこから「医療」「介護」「保健・福祉」という葉が育つというイメージです。住まいが整っていなければ、その他の要素が機能しないという基本構造を示しています。
「4つの助」がシステムを支える
5つの構成要素を支えるのが、「自助」「互助」「共助」「公助」という4つの考え方です。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 自助 | 自身や家族による健康管理、介護保険・医療保険の自己負担分、市場サービスの購入 |
| 互助 | 近隣住民、ボランティア、NPOなど制度に基づかない支え合い |
| 共助 | 介護保険・医療保険による相互扶助(社会保険制度) |
| 公助 | 税金を財源とする公的サービス、生活保護など |
地域包括ケアシステムは公助と共助だけでは支えきれず、自助・互助の役割が大きくなる前提で設計されています。
2025年問題から2040年問題へ|地域包括ケアの新たな局面
地域包括ケアシステムはもともと2025年問題への対応として設計されました。2025年問題とは、団塊世代(1947〜1949年生まれ、約800万人)が2025年までに全員75歳以上となることで生じる、医療・介護需要の急増と社会保障費の膨張を指します。
しかし、2025年が目前に迫った頃から、政策論議の焦点はすでに次の「2040年問題」へと移り始めています。
| 区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 2025年問題 | 団塊世代が全員75歳以上となり、後期高齢者人口がピークを迎える節目 |
| 2040年問題 | 団塊ジュニア世代(1971〜1974年生まれ)が65歳以上となり、高齢者人口全体がピークを迎える。同時に生産年齢人口の急減で介護人材不足が深刻化 |
特に注目すべきは、85歳以上人口が2035年に1,000万人を超えると見込まれている点です。85歳以上では医療と介護を同時に必要とする方が大幅に増えるため、地域包括ケアシステムの中でも、医療と介護を一体的に提供できる仕組みの重要性が一段と高まります。
地域包括ケアシステムにおけるナーシングホームの役割
地域包括ケアシステムが目指す「住み慣れた地域で最期まで暮らす」を実現するには、自宅での生活が困難になった方の受け皿が必要です。しかし、一般的な老人ホームでは医療依存度の高い方を受け入れられず、療養病床は削減が進み、特別養護老人ホームは要介護3以上に限られて待機者も多いのが実情です。
この空白を埋める存在が、ナーシングホームです。ナーシングホームは住宅型有料老人ホームに看護師の常駐や訪問看護との連携を加え、医療依存度の高い高齢者を受け入れられるようにした施設で、地域包括ケアシステムの5つの構成要素の多くを一体的にカバーできます。具体的な参入条件や開設手続きについては、「ナーシングホームを開設するには?参入条件・収益モデル・成功のポイントを徹底解説」で詳しく解説しています。
5つの構成要素とナーシングホームの対応
| 構成要素 | ナーシングホームでの提供形態 |
|---|---|
| 住まい | 居室を生活の場として提供。原則個室、入居者一人あたり13㎡以上の住環境 |
| 医療 | 常駐または連携する看護師・訪問看護、協力医療機関による訪問診療で対応 |
| 介護 | 訪問介護等の介護保険サービスを提供。看取りまでカバーするケースも多い |
| 予防 | 機能訓練、レクリエーション、健康管理によるADL維持支援 |
| 生活支援 | 食事提供、安否確認、外出付き添い、家族との連絡調整など |
ナーシングホーム1施設で全要素を完結させるわけではなく、地域の医療機関・訪問看護ステーション・ケアマネジャー・ソーシャルワーカー等と連携しながら提供する形が基本です。この多職種連携の体制こそが、地域包括ケアシステムの理念と一致しています。
多職種連携のハブとして機能する
ナーシングホームには、看護師・介護士に加え、外部の医師・薬剤師・理学療法士・ケアマネジャー・ソーシャルワーカーなど多様な専門職が日常的に関わります。施設が一種の「連携ハブ」として機能することで、地域内の専門職同士のコミュニケーションが活発化し、結果として地域全体のケアの質向上に寄与します。
事業者として地域包括ケアシステムにどう関わるか
ナーシングホームを運営する事業者にとって、地域包括ケアシステムへの参画は、単なる社会的責任の話ではなく、安定稼働と地域での存在感確立に直結する経営テーマです。具体的に取り組むべきポイントを整理します。
1. 地域包括支援センターとの関係構築
地域包括支援センターは、市町村が設置する地域包括ケアの中核拠点です。総合相談支援、権利擁護、ケアマネジメント支援などを担っており、入居検討者の紹介ルートにもなり得ます。定期的な情報交換と顔の見える関係づくりが重要です。
2. 病院との連携
地域の急性期病院・回復期病院との連携は、退院後の受け入れルートを確保する上で欠かせません。地域連携室やソーシャルワーカーとのこまめな情報共有、退院前カンファレンスへの参加などが効果的です。
3. 在宅医療チームとの協働
在宅療養支援診療所、訪問看護ステーション、調剤薬局など、在宅医療を担う事業者との連携も必須です。複数の連携先を持つことで、緊急時の対応力が高まり、入居者・家族の安心感にもつながります。
4. 地域住民・自治体との接点づくり
地域包括ケアシステムの「互助」を支えるのは地域住民です。施設を地域に開かれた場として運営し、地域行事への参加、家族会、ボランティアの受け入れなどを通じて、地域に根ざした施設としての認知を高めることが、長期的な稼働の安定につながります。
ナーシングホームの今後|2040年に向けた需要拡大
2025年以降の介護業界では、医療と介護の複合ニーズを持つ高齢者がさらに増えていきます。85歳以上の人口増加に加え、独居高齢者世帯の増加、認知症高齢者の増加といった構造的変化が同時進行する中、自宅でも一般的な介護施設でも対応しきれないケースが拡大していくと見込まれます。
こうした背景から、ナーシングホームへの社会的需要は2040年に向けて拡大基調で推移するでしょう。一方で、介護人材不足は深刻化が続くため、限られたリソースでケアの質を維持するためのICT活用・業務効率化が、事業者にとって避けられない課題となります。介護事業者の倒産が過去最多水準にある中、ナーシングホームへの業態転換が経営戦略として注目されている背景については、「ナーシングホーム業界の動向|『淘汰の時代』に老人ホーム経営の活路はあるのか」でもご紹介しています。
地域包括ケアシステムの理念を体現できる施設としての強みを活かしつつ、現場の生産性を高めていくこと。これがこれからのナーシングホーム経営に求められる姿勢です。
地域包括ケアシステムとナーシングホームに関するよくある質問
地域包括ケアシステムは誰が構築・運営するのですか?
地域包括ケアシステムは2025年で完成したのですか?
ナーシングホームと特別養護老人ホームはどう違いますか?
ナーシングホームと特別養護老人ホームはどう違いますか?
ナーシングホームを開設するにはどんな基準を満たす必要がありますか?
地域包括支援センターと地域包括ケアシステムは同じものですか?
多職種連携を支えるICT基盤として—ナースコールの見直し
地域包括ケアシステムの中でナーシングホームが機能するには、施設内の看護師・介護職員の連携はもちろん、外部の医師・訪問看護師・ケアマネジャー等との情報共有も欠かせません。その基盤となるのが、現場の記録・連絡を支えるICT機器です。
HELPCAREは、LTE通信を使った工事不要の無線型ナースコールです。スタッフのスマートフォンで呼出受信・見守り・巡視記録が完結し、介護記録システムとの連携構成も組みやすい設計になっています。多職種が関わるナーシングホームでも、現場の負担を抑えながら情報共有の基盤を整えられる選択肢です。
有線・PHS・Wi-Fi・LTEの4タイプの違い、コストの比較基準、施設規模別の選定チェックリストをまとめた「ナースコール選定ガイド」を無料でダウンロードできます。地域包括ケアシステムへの参画準備として、業務効率化の第一歩にご活用ください。
参考・出典
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」
- 厚生労働省「地域共生社会のポータルサイト」
- 公益社団法人 全日本病院協会「みんなの医療ガイド:地域包括ケアシステム」
- 内閣府「令和7年版 高齢社会白書」
- 厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」(令和6年12月6日改正)
※本記事は2026年5月時点の情報に基づきます。制度内容は改正される可能性があるため、最新の情報は厚生労働省や所管自治体の公式情報をご確認ください。

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