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【2024年 医療・介護同時改定】訪問看護への影響は?

#そのほか

2024年は、医療・介護・障害福祉分野の報酬が同時改定される、いわゆる「トリプル改定」の年です。訪問看護ステーションの経営者・管理者としては、診療報酬・介護報酬の改定内容が気になるところです。

2023年12月現在、厚生労働省社会保障審議会の医療保険部会からは「診療報酬改定の基本方針」、介護給付費分科会からは「訪問看護(改定の方向性)」が示されています。トリプル改定に向けて、どのようなことが議論されているのでしょうか?

ここでは、訪問看護ステーションの経営者・管理者に向け、医療保険部会・介護給付費分科会の資料の中で議論されていることについてお伝えします。

2024年は医療・介護・障害福祉のトリプル改定

通常、診療報酬は2年に一度、介護報酬と障害福祉サービスは3年に一度のサイクルで制度が見直されます。診療報酬・介護報酬・障害福祉サービスの見直し時期が重複し、3つの制度が同時に改定されるのが2024年です。

訪問看護ステーションでは、診療報酬・介護報酬の改定内容によりサービス提供や売上等が変わってきます。また、障害福祉サービスを利用している方に訪問看護を行っている場合には、さらなる連携強化が推進されるかもしれません。いずれにしても、経営者・管理者としては、3つの制度がどのように見直されるのか逐一情報収集し、速やかに体制を変更できるよう準備しておくことが重要です。

医療保険部会・介護給付費分科会で議論されているこ

診療報酬・介護報酬は、厚生労働省の社会保障審議会で議論され、制度内容や報酬等が改定されます。診療報酬は「社会保障審議会医療保険部会」、介護報酬は「社会保障審議会介護給付費分科会」が管轄です。

それぞれの部会・分科会ではどのようなことが議論されているのでしょうか。ここからは、医療保険部会・介護給付費分科会の資料をもとに、部会・分科会で議論されていることを紹介します。

医療保険部会|診療報酬について議論されていること

医療保険部会では、主に4つのテーマで議論されています。以下、「診療報酬改定の基本方針(令和5年9月29日、医療保険部会)」をもとに、訪問看護について部会で出されている意見を説明します。

① 更なる高齢化を見据えた訪問看護の役割等

訪問看護は、子どもから高齢者まで、幅広い世代の医療・介護を担うサービスです。医療保険部会では、退院後継続して医療を必要とする方、在宅での看取りを希望する方、神経難病や小児等、多様なニーズに対応するために、安定した24時間のサービス提供体制の構築・強化について言及しています。

また、口腔機能の課題を抱える利用者がいることを踏まえ、口腔管理、口腔機能維持・向上に向けた多職種連携を推進する仕組みづくりが求められています。

② 地域のニーズに応えられる訪問看護の提供体制

24時間のサービス提供体制の負担を考慮し、早朝・夜間対応の評価、複数事業所との連携による体制確保の必要性が強調されています。

一方で、理学療法士・作業療法士等による訪問看護について、本来の役割が果たせるよう訪問看護の実施・評価・改善の一体的管理が必要とされています。これは理学療法士・作業療法士等の訪問が多い事業所は、看取りの実績が少ない、軽度者の割合が多いという結果もあり、「療養上の世話やそれに必要な診療の補助」が行えていないことが危惧されているからです。

③ 介護保険と医療保険の訪問看護の対象者

末期の悪性腫瘍をはじめ、厚生労働省大臣が定めた疾病等(「別表」第7)の見直しの話が挙がっています。医療保険部会としては、「要望のみによって安易に医療保険・介護保険の境界を変更すべきではない」と、見直しに慎重な姿勢です。

④ 介護保険と医療保険の訪問看護に関する制度上の差異

訪問看護は、利用者の状況により、医療保険・介護保険で行う場合あります。そこで問題視されているのが、「ターミナル期等で介護保険から医療保険に移行したことで加算要件を満たせなくなるケース」、「介護保険・医療保険とで事業所の体制に関して要件が異なるケース」があることです。医療保険部会では、同時改定に向けて、重度者の医療ニーズに対応したり、看取りを実施したりする事業者への評価の整理・検討が議論されています。

(参照元 厚生労働省社会保障審議会医療保険部会|診療報酬改定の基本方針 参考資料 )

介護給付費分科会|介護報酬について議論されていること

訪問看護について、介護給付費分科会で論点となっているテーマは6つです。以下、『「訪問看護(改定の方向性)」(令和5年11月6日、介護給付費分科会)をもとに、分科会で出ている論点・対応案を説明します。

①専門的なケアのニーズが高い利用者への対応

介護保険の訪問看護でも、悪性新生物や神経疾患等の利用者が増え、現場では褥瘡の処置・人工肛門の管理・緩和ケア等が行われています。そうした実態を考慮し、介護給付費分科会では、訪問看護事業所において専門性の高い看護師※1が指定訪問看護※2の計画的な管理を行うことを評価してはどうか、対応案が示されています。

※1 緩和ケア、褥瘡ケアもしくは人工肛門ケアおよび人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師、または特定行為研修を修了した看護師

※2 看護小規模多機能型居宅介護を含む

②看取り体制の強化

介護保険・医療保険の訪問看護で看取りのニーズ・機会が増えています。離島等では、医師が死亡診断を行うまでに時間がかかる、遠方の医療機関に救急搬送して死亡診断を受けるケースがあるといった課題があります。

対応としては、現在のターミナル加算について、診療報酬の評価を踏まえた単位数の見直し案が出ています。また、離島等にお住まいの利用者に対しては、医師が、ICTを活用した在宅での看取りに関する研修を受けた看護師が補助した場合を評価してはどうか、対応案が挙がっています。

※3 看護小規模多機能型居宅介護を含む

③訪問看護における持続可能な24時間対応体制の確保

在宅における医療ニーズが高まり、24時間体制の訪問看護を提供する事業者が増えています。一方で、「ICT活用」「夜間対応した翌日の勤務調整」「勤務間インターバルの確保」といった取組を行っている事業所は、2割程度と少ない状況です。

介護給付費分科会では、24時間体制の訪問看護を持続的に提供できる仕組みづくりが課題に挙げられています。現在のところ、緊急訪問の必要性の判断を看護師等が行えるよう連絡体制を整備している等、一定の体制を構築している場合に、看護師以外の職員も利用者・家族等からの電話連絡を受けられるようにしてはどうか、対応案が提示されています。

④理学療法士等による訪問看護の評価

令和3年度介護報酬改定では、理学療法士等が行う訪問看護が12箇月を超える場合と、1日2回を超える場合の評価について見直されました。

これに関連して、訪問看護の役割に基づくサービスを提供する観点から、サービスの提供体制や実績等を踏まえ、理学療法士等による訪問看護の評価を差別化してはどうか、話がされています。

⑤円滑な在宅以降に向けた医療と介護の連携

入院中の要介護者等がスムーズに在宅移行するために、医療と介護の連携が重要視されています。令和3年度介護報酬では、主治医が必要と認める場合に退院当日の訪問看護が算定可能となりました。

退院当日の利用者・家族の困りごととしては、「体調・病状」「緊急時の対応」等が多い状況です。そのため、現場では、退院当日から「服薬援助」「家族との調整(ケアの指導等)」「点滴の管理」等の医療的な対応が行われています。現在、「退院時共同指導」は文章によって内容を提供する形になっていますが、共同指導を効率的に実施する観点から、文書以外の方法で提供する形に変更する案が出ています。

⑥訪問看護と他介護保険サービスとの更なる連携強化

訪問看護は、他の介護サービスと連携することが重要です。しかしながら、連携の状況は事業所によりばらつきがあるのが現状です。

訪問看護と他の介護サービスの連携を推進する動きとしては、両者の連携に関わる取組みを、訪問看護の提供体制を評価するにあたっての要件にする等の案が示されています。

(参照元 厚生労働省社会保障審議会審議会介護給付費分科会|訪問看護(改定の方向性)

<h2>まとめ</h2>

今回は、医療保険部会・介護給付費分科会の資料をもとに、それぞれの部会・分科会で議論されていることをお伝えしました。ポイントは、「24時間体制の訪問看護を確保すること」「重症者や看取り・ターミナル対応」「医療機関または他介護サービスとの連携」です。

訪問介護のニーズが高まる中で、24時間体制でサービスを提供する事業所が8割を超えています。しかしながら、多くの事業所では、看護師の負担増等の理由から24時間体制を維持するのに困難をきたしている状況です。経営者・管理者としては、特に夜勤負担が少なくできるよう働き方を工夫し、職員が長く健康的に働ける仕組みづくりが求められます。

また、入院日数が短縮されるに伴い、今後ますます医療依存度の高い方が早い段階で在宅復帰することが予想されます。ターミナル加算の単位数見直し等の話も挙がっており、今後の動向に注目したいところです。

介護給付費分科会では、訪問看護ステーションと医療機関・他の介護サービスとの連携も強調されています。スムーズな在宅移行、利用者の健康管理・QOLの向上、家族の介護負担軽減を実現するには、いろいろなサービスが必要になるものです。そのため、今後の介護報酬改定に向けても、事業者間の連携が推進されていくでしょう。

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