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ナーシングホーム業界の動向|これからの老人ホーム経営に活路はあるのか?

#そのほか

有料老人ホームをはじめ、高齢者向けの施設・住宅が年々増加しています。なかでも有料老人ホームの数が急増しており、他業者との差別化を図らなければ、入居者を獲得していくのが難しい状況になってきています。

そこで注目されているのが、医療的ケアを強化した住宅型有料老人ホーム「ナーシングホーム」です。

病床数削減で病院から自宅・介護施設への流れに

人口の高齢化が進み、地域における医療・介護の位置づけが大きく変化しています。特に、医療面では病床数が削減し、継続的に医療・介護を必要する方の受け皿が減ってきている状況です。厚生労働省がまとめた「医療提供体制の現状~病院数の推移~ 」によれば、日本の病床数は1993年に1,680,952床でピークに達したのち、徐々に減少を続け2021年には1,500,057床になっています。

病床数が減少すれば、不必要な医療費が削減できます。一方で、日常的に医療処置が必要な方にとっては、自宅や介護施設で生活することが余儀なくされ、それができなければ行き場がないという状況が生まれているのです。また、高齢者の平均在院(入院)日数も年々減少するなど、国の方針としては早期退院が推進されています。

従来であれば、急性期・回復期の入院治療が終了した高齢者は、継続して医療的なケアが必要であると慢性期病院などで療養することができました。しかしながら、これからは慢性期病院ではなく、積極的に自宅や介護施設へ退院する流れになっていきます。

増加する老人ホームと求められている医療ニーズ

病床数が減少する一方で、高齢者向けの住宅・施設が増加しています。なかでも、有料老人ホームの増加が顕著です。有料老人ホームの施設数は、2013年時点で全国に387,666箇所ありましたが、2019年には539,995箇所に増加しています。なかでも住宅型有料老人ホームの数が増えており、2013年(189,800箇所)と比べると、2019年には1.5倍以上の293,326箇所になっています。

老人ホームの施設数が増えるということは、利用者・家族からすれば入居・入所できる施設の選択肢が増え、退院後の生活を組み立てやすくなると言えるでしょう。けれども、事業者としては、競合他社が多くなるほど入居者の獲得が難しくなるものです。

一方で、一般的な老人ホームは、専門性の高い医療処置に対応していない施設が多いです。糖尿病の方に対するインシュリン注射や経口摂取の困難な方に対する経管栄養・胃ろうの処置などが行えても、ターミナルケアを希望したり、人工呼吸器を装着していたりする方の受入れを行っている施設は多くありません。

つまり、一般的な老人ホームでは、専門性の高い医療処置が必要な方のニーズに応えることができないのです。これは、言い換えると、医療・介護の機能を備えた施設に体制を整えれば、他の老人ホームとの差別化が図れるとともに、医療ニーズを持った利用者をより多く獲得しやすくなることを意味します。

(参照元 厚生労働省|特定施設入居者生活介護 )

ナーシングホームのビジネスモデル

いくら医療・介護のニーズがあっても、収益を得られなければナーシングホームを運営することは困難です。ここからは、ナーシングホームのビジネスモデルを紹介します。

ナーシングホームの運営による収益は、主に次の3つです。

① ナーシングホームの居住費

一般的な有料老人ホームと同じように、ナーシングホームでは、居住費が利用者の自己負担です。費用は事業者が設定することができます。1部屋15万円で、20床のナーシングホームを運営するのであれば、毎月の売上イメージは15万円×20床=月間300万円となります。

② 介護報酬(訪問介護)

ナーシングホームで介護サービスを受けるには、訪問介護を利用する必要があります。そのため、訪問介護事業所を運営している介護事業者であれば、ナーシングホームの入居者に対して提供した介護サービスについて、その分の介護報酬を収益として得ることが可能です。

③ 医療報酬(看護、訪問看護)

多くのナーシングホームでは看護師を常時配置、または訪問看護体制を構築し、医療サービスを提供しています。看護師による医療処置は医療保険の対象です。

また、要介護高齢者では介護保険の訪問看護を利用するケースが多いですが、特定疾患であったり、年齢が若かったりするケースでは医療保険で訪問看護を提供することになるので、提供した医療サービス分の報酬が事業所の収益になります。

医療的ケアを強化することで差別化が図れる

老人ホームの数が増加する中、医療提供体制を強化し、ナーシングホームに運営を転換する施設も見受けられてきています。既存の介護サービスに加え、積極的な医療的ケアを取り入れていくことで、医療・介護を必要とする人たちのニーズを満たせるとともに、他の事業者との差別化も図ることができます。

社会的にはますます進む人口の高齢化、慢性期をはじめとする病院全体の病床数が減少、早期退院の推進。家庭的には老々介護・介護離職などの問題が山積。となれば、医療・介護どちらも提供できる施設の需要が高まるのは自然と言えるでしょう。

既存の老人ホーム経営がうまくいっていないのだとしたら、ナーシングホームへの事業転換を検討してみてはいかがでしょうか。

“住み慣れた地域で自分らしく暮らす”ためのナーシングホーム

日本では、2025年を目途に地域包括ケアシステムの構築を推進しています。地域包括ケアシステムとは、高齢者の尊厳保持と自立生活の支援を目的に、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで送れるよう支援・サービスを提供する体制のことです。「住み慣れた地域で自分らしく暮らす」とは言っても、自宅・病院・介護施設など生活の場はさまざまです。

しかしながら、病床数削減に加え、老々介護・介護離職などの問題もあり、医療・介護どちらも必要とする人たちの行き場はなくなっています。一方で、最近では、医療・介護どちらも継続的に受けられるナーシングホームが増えています。自宅で生活するのは難しい、介護施設に入居を断られたなどの問題で悩んでいるのでしたら、「住み慣れた地域で自分らしく暮らす」場として、ナーシングホームを検討されてみてはいかがでしょうか。

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